デンタルニュース

フッ素は体に悪いの?フッ素の安全性について解説

デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

「フッ素って体に悪いって聞いたけど、歯磨き粉で使ってて大丈夫?」
「禁止されている国もあるんでしょう?」

歯医者に行くとフッ素をおすすめしているところがほとんどだと思います。

また、市販の歯磨き粉にもほとんどフッ素が含まれています。

一方で、フッ素は「危険」「体に悪い」という意見を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

結局体に良いの?悪いの?と気にされている方もいらっしゃるかもしれません。

結論からいうと、虫歯予防のためのフッ素の活用は安全であり、効果も実証されています。

しかし、誤った使い方をすると危険な場合もあるのは事実です。

この記事では、フッ素が体に悪いと言われる理由や、フッ素の安全性について詳しく解説しています。

また、フッ素の効果的な使い方についてもまとめているので、フッ素との付き合い方に悩まれている方は参考にしてみてください。

フッ素で虫歯を予防するイメージ

Ⅰ フッ素とは

「フッ素」とは、自然界に存在する物質の一つで、土壌や海水などに含まれています。土の中で育つ野菜や、海水に生息している魚介類、そして人間にも含まれているのです。

そのため、フッ素=体に悪いというわけではありません。

Ⅰ-1.フッ素は毒?体に悪いと言われる理由

①元素のフッ素は毒

元素単体の状態のフッ素は、毒です。

しかしフッ素には酸化作用があるので、すぐに化合物となり、ほぼ毒の状態では存在できません。

歯医者でフッ素と呼ばれて使われているのは、元素の組み合わせでできたフッ化ナトリウムです。

元素単体と、元素の組み合わせでできたものは全く別のものになります。

②急性中毒

フッ素の急性中毒は、大量のフッ素を一気に摂取することによって起こります。

吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、けいれんなどの症状が現れます。

中毒を起こす量はフッ素の濃度や個人の体重によって変わってきますが、大人(60kg)であれば1450ppmの歯磨き粉を80g程度飲むと中毒症状が出る可能性があります。

歯磨き粉の1回の使用分が1〜1.5gと言われているので、80gとは相当な量です。

なかなかその量を飲む機会はないと思います。

体重15kgのお子様だと、子供用歯磨き粉を1本飲むと中毒症状が出る可能性があります。

子供用の歯磨き粉はお子様の好みの味になっていることが多いので、手の届く範囲に置くのは避け、誤飲に気をつけましょう。

しかし実際に、私が10年以上歯科の診療に携わってきて、フッ素の急性中毒になったという話は聞いたことがありません。

しっかり管理に注意していれば、日常生活で使用する歯磨き粉のフッ素量で急性中毒になる心配はないでしょう。

③慢性中毒(フッ素症)

慢性中毒とは、長期間にわたって過剰なフッ素を摂取することで起こります。

歯が出来あがるまでの時期(生まれてから7、8歳まで)に、過剰なフッ素を長期間摂取すると、歯の表面に白い斑点などが見られます。

私の知り合いの歯医者の先生に、歯のフッ素症になってしまっている先生がいます。

ご実家が歯医者で、お父様がフッ素を頻繁に塗りすぎたそうです。

決められた定期検診の頻度であればそのような心配はないですが、かかりつけの歯医者がなかったり、かかりつけの歯医者以外でフッ素を塗る機会がある場合は、「いつ塗ったかな?」とならないようにしっかり把握しておきましょう。

Ⅰ-2.フッ素の安全性

①世界各国で推奨されている

フッ素の使用は、世界保健機(WHO)や、アメリカ歯科医師会などの国際的な医療機関でも推奨されています。

また、「ヨーロッパではフッ素が禁止されている」と聞いたことがある方も居るかもしれませんが、ヨーロッパでは虫歯予防のためのフッ素は使用されています。

国によっては水道水へのフッ素の添加をしていませんが、歯磨き粉にはフッ素が添加されています。

②適切な濃度や頻度での使用が大切

歯科で使用されるフッ素は危険ではありませんが、前述したように、適切な使用頻度や量を守らなければ体に悪影響が出てしまいます。

これはフッ素に限ったことだけでなく、薬や食品でも同じことが言えます。

薬は、決められた容量であれば効果的ですが、大量に摂取すると体に害がある場合があります。

日常的に摂取している醤油や塩なども、大量に摂取すると死に至ると言われています。

過剰摂取にならないよう注意し、適切な方法で使用することが大切です。

フッ素を使用したデンタルケア用品

Ⅱ フッ素の効果的な使い方

フッ素を上手に活用することで、虫歯予防の効果を得られます。

では、フッ素を上手に活用するには、どのような方法があるのでしょうか?

日常的に取り入れられるフッ素の使用方法についてまとめていますので、参考にしてみてください。

Ⅱ-1.フッ素を使用する機会

①フッ化物配合歯磨剤

毎日の歯磨きの際に、フッ素入りの歯磨き粉をつけて使用します。

年齢に応じた適切な濃度と量は、

5歳以下:1,000ppm以下の濃度、米粒大

6歳~大人:1,450ppmの濃度、1~2cm

となっています。

使用後に大量のうがいをすると、フッ素の効果が弱まってしまうので、うがいは少量の水で1回のみ行うようにしましょう。

市販の歯磨き粉のほとんどにフッ素が含まれているので、1番日常に取り入れやすい方法だと思います。

②フッ化物歯面塗布

歯医者や、市区町村の乳幼児検診などで、フッ素を塗ってもらう方法です。

高濃度のフッ素を歯の表面に塗ります。

1回の塗布だけでは効果は得られず、年2回以上継続して塗布することで虫歯予防に効果的です。

③フッ化物洗口

フッ素の含まれる洗口液で、1分程度ブクブクうがいをします。

毎日法(週5回法)と、週1回法があります。

学校などで集団で行われていますが、最近は市販でも洗口液が販売しており、おうちで手軽に行うことができます。

ブクブクうがいができるようになる4歳以上の使用が推奨されています。

Ⅱ-2.フッ素の利点

①虫歯予防

フッ素には、虫歯菌の活動を抑える効果があります。

通常、虫歯菌が作り出す酸によって、歯が溶けてしまい虫歯ができます。

フッ素はその虫歯菌の働きを弱め、酸が作られるのを抑制します。

②再石灰化を促進する

再石灰化とは、溶けた歯を元に修復する働きのことを言います。

虫歯菌によって酸が作られると、その酸によって歯のカルシウムやリンが溶け出します。これが「脱灰」と言われる働きです。

それに対して、口の中の唾液が溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す「再石灰化」をしています。

口の中では常に「脱灰」と「再石灰化」が行われているのです。

フッ素は、その再石灰化の働きを促進する効果があります。

③歯質を強化する

フッ素は、歯の表面のエナメル質を強化し、酸に溶けにくい強い歯にする効果があります。

歯質が強化されることで、虫歯の発生を抑制することができ、虫歯になりにくい歯になります。

歯の再石灰化を促進するイメージ

Ⅲ まとめ

フッ素の中毒症状などを知り、怖いと感じる方も居るかもしれません。

しかし、フッ素は濃度や量を適切に使用すれば、安全で効果的な虫歯予防の方法です。

正しい情報を選択して、フッ素を使用するかどうか、考えていきましょう。

ただし、「フッ素を塗っているから絶対に虫歯にならない」というわけではありません。

虫歯菌が多ければ、フッ素を塗っても酸が作られてしまい歯が溶けて虫歯となってしまいます。

虫歯にならないためには、毎日の歯磨きを丁寧に行うことが大切です。

毎日の歯磨きをしっかり行った上で、フッ素を取り入れて虫歯予防の効果を高めていきましょう。

この記事を監修した人

医療法人社団周優会 常務理事 笠原幸雄

医療法人社団周優会
常務理事 笠原幸雄

所属学会

東京シティー日本橋ロータリークラブ会員
お江戸日本橋歯科医師会選挙委員会 委員長
一般社団法人 日本橋倶楽部会員
東京科学大学歯学部 東京同窓会参与

略歴

私立開成高校卒業
早稲田大学理学部卒業
東京医科歯科大学歯学部卒業
東京医科歯科大学病院勤務
笠原歯科医院 蔵前開設
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 人形町開設
医療法人社団周優会 日本橋グリーン歯科 常務理事
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 六本木開設