デンタルニュース
インプラント手術当日はどう過ごすべき?
日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。
インプラントの手術を受けた日は、楽しみよりも「このあとどう過ごせばいいんだろう…」と不安が大きくなる方が多いように感じます。
食事はいつから?お風呂に入っても大丈夫?夜は普通に眠れる?
そんな疑問が次々と浮かんできますよね。
実際、私が診療で患者様とお話をする中でも、「当日の過ごし方だけ先に知っておきたかった!」という声をよく耳にします。
ちょっとしたポイントを知っておくだけで、腫れや痛みが少なく、安心して過ごせるようになることがほとんどです。
この記事では、インプラント手術の日に気をつけたい食事・入浴・生活・眠り方について、できるだけわかりやすくまとめました。
手術の前に軽く目を通しておくのもおすすめですし、当日ふと不安になったときにも役立つ内容になっていますので、参考にしてみてください。

手術当日の「食事」の注意点
①食べて良いもの・控えるべきもの
刺激物・熱いものを避ける理由
インプラント手術当日は、辛い料理や熱い汁物、アルコールといった刺激のあるものは避ける必要があります。
これらは体温や血流を急激に上げてしまい、痛みや腫れを強める原因になります。
また、麻酔が残っていると熱さを感じにくく、知らない間に口の中を火傷してしまうこともあります。
柔らかい食事の具体例
手術当日は、噛まなくても飲み込めるような柔らかい食事が理想的です。
ヨーグルトやプリン、おかゆ、冷ましたスープや茶碗蒸し、絹ごし豆腐など、刺激の少ないものが向いています。
私は診療で「小さなお子さんでも食べられそうなものを選ぶと間違いないですよ」とよくお伝えしています。
口の中の負担が少なく、麻酔の残るタイミングでも安心して食べられます。
②食べる際の注意点
反対側で噛むコツ
食事をするときは、インプラントを入れた側ではなく、反対側だけを使って噛むことが大切です。
傷口に刺激が加わると痛みや出血につながるため、最初の数日は特に意識する必要があります。
焦らず小さく一口ずつ口に運ぶと、反対側で噛みやすく、誤って手術側に力が入るのを防ぐことができます。
患者様からも「気をつけていたつもりなのに無意識に手術側を使っていた」という声が多いため、意識してゆっくり食べることが大切です。
飲み込みにくい時の対処法
術後の腫れや緊張で、飲み込みづらく感じる方も少なくありません。
そのような時は、一口量を小さめにしたり、冷たい飲み物を少し含んで流すように食べると楽になります。
無理に噛もうとせず、飲める状態の食事を選ぶことで負担が減ります。
特に高齢の患者さんでは「喉に力が入らない気がする」と相談されることが多いため、焦らずゆっくり進めることが安心につながります。
手術当日の「入浴・生活」の注意点
①入浴・シャワーのポイント
当日は湯船NGの理由
インプラント手術当日は、湯船に浸かるのは避けた方が安心です。
温かいお風呂は全身の血流を急に高めてしまうため、傷口からの出血や腫れが強くなる可能性があります。
特に体が温まりすぎるとズキズキとした痛みが増すこともあり、実際に「お風呂に少し浸かったら腫れが気になってきた」と不安を訴えた患者様もいました。
手術当日は、体を温めすぎないことが大切です。
シャワーの温度と時間
手術当日は、シャワーを浴びる場合でも短時間で済ませ、ぬるめの温度が望ましいです。
長く浴びていると体温が上がりやすく、腫れや痛みを誘発することがあります。
髪や体を洗うときも、できるだけ手早く済ませて、顔まわりを強くこすったり温めたりしないよう注意が必要です。
②運動・飲酒・喫煙の注意点
血流を上げる行動がNGな理由
激しい運動やサウナ、長距離の移動など、体を強く動かしたり温めたりする行動は当日控える必要があります。
これらはすべて血流を急激に上げるため、腫れや痛みが強くなる原因になります。
特に手術後は体が敏感になっているため、普段よりも軽い運動でも影響が出ることがあります。
「普段は大丈夫だから」と動いてしまうと、翌日に腫れが強くなり、治りが遅れることにつながります。
喫煙は特に要注意
手術当日の喫煙は、他の生活習慣よりも強く控えるべき行動のひとつです。
たばこの煙は歯ぐきの血流を悪くし、治りを大きく妨げます。
傷口の治りが遅くなることで細菌が増えやすくなり、手術部位の腫れや痛みにつながるだけでなく、インプラント周囲炎のリスクも高まります。
実際に喫煙している患者様では、術後の腫れが長引いたり、痛みが強く出るケースも見てきました。
どうしても吸いたいという方でも、最低限「手術当日だけでも控える」だけでリスクは大きく下がります。

手術当日の「就寝」の注意点
①寝る姿勢と枕の高さ
腫れを防ぐ体勢
インプラント手術当日の夜は、横になる姿勢によって翌日の腫れの出方が大きく変わります。
頭を高くして寝ることで、手術した部分に血液が集まりにくくなり、腫れを抑える効果があります。
枕にバスタオルなどを重ねたり、ソファで軽く上体を起こして眠るような姿勢でも構いません。
実際に患者様からも「枕を高めにしたら翌日の腫れが気になりませんでした」と言われることも多く、就寝姿勢は見た目の回復にも影響します。
横向き寝の注意点
普段から横向きで寝ることが多い方は、その日の夜だけは手術した側を下にして寝ないよう注意が必要です。
頬が枕に押されることで、手術部位に負担がかかり、内出血や腫れが強くなることがあります。
また、無意識に触れてしまうことで痛みが出ることもあります。
どうしても横向きでしか眠れない方は、手術していない側を下にして、できるだけ優しく頭を支えるような姿勢が安心です。
②寝ている間に気をつけたいこと
出血した場合の対処法
手術当日の夜は、眠っている間に少量の出血が続くことがあります。
枕に少し血がついている程度であれば心配いりませんが、もし口の中に血が溜まる感覚や生温かい味を感じた場合は、軽くティッシュを噛んで圧迫し、しばらく落ち着くのを待つことで多くの場合止まります。
強いうがいをすると再び出血しやすくなるため、ゆっくりと口をゆすぐ程度にとどめることが大切です。
寝返りで患部を圧迫しない工夫
眠っているときはどうしても寝返りをしてしまいますが、術側を下にして寝てしまうと頬が枕に押されてしまい、腫れや痛みが強まることがあります。
特に、横向き寝が習慣になっている方は、寝る前に「手術していない側を下にする」ことを意識してみてください。
枕の両側にタオルやクッションを軽く置き、自然に仰向けになりやすい環境をつくると、寝返りを抑えやすくなることもあります。
体が冷えすぎないようにするポイント
腫れを抑えるために冷やすことは必要ですが、就寝中に体全体が冷えすぎてしまうと睡眠が浅くなり、無意識の噛みしめが強くなる方もいます。
頬の冷却は手術当日のみで十分なので、寝るときは顔以外が冷えないよう軽いブランケットを使い、体のリラックスを心がけると良い睡眠につながります。

翌日からはどうなる?回復の目安
①腫れ・痛みのピーク
一般的な経過
インプラント手術の翌日になると、多くの方が「腫れが強くなってきた気がする」と感じます。
これは異常ではなく、手術後の生理的な反応として、ごく自然な経過です。
腫れは通常、手術の翌日から2日目あたりが最も強く、その後3〜4日目にかけてゆっくりと落ち着いていきます。
また、痛みに関しても同様で、術後すぐより翌日に重たさを感じることがありますが、処方されている痛み止めを適切に使えばコントロールできるケースがほとんどです。
患者様からも「翌日が一番腫れて驚いたけれど、そのあと少しずつ引いて安心した」という声をよく伺います。
異常が疑われる場合の目安
通常の経過とは異なり、痛みが日ごとに強くなる、腫れが一週間以上たっても減らずに広がっていく、触れていなくてもズキズキと熱を感じる、口の中に膿のような味が続くといった症状がある場合は、炎症が進んでいる可能性があります。
そのような変化は、ご自身では様子を見ていて良いのか判断がつきにくいことも多いため、気になることがあれば早めに受診していただく方が安心です。
過去には「たいしたことないと思って放置したら、治るまでに時間がかかってしまった」という方もいらっしゃいました。
少しでもいつもと違うと感じたときは、遠慮なく歯医者で相談していただくことをおすすめします。
③セルフケアの開始時期
うがい・歯みがきはいつから?
手術翌日になると、軽いうがいなら可能になることが多いですが、強く何度もゆすぐと傷の治りが遅くなることがあります。
歯みがきも同様で、インプラント部位を避けながら、他の部分だけ優しく磨くようにすると安心です。
術後数日は特に傷がデリケートなため、歯ブラシを当てると痛みが出ることもあります。
患者様の中には「怖くて手術側に歯ブラシを近づけられなかった」という方も多いので、無理せずできる範囲からスタートするのが良い方法です。
消毒や処方薬の使い方
術後に処方される抗生剤やうがい薬は、決められた回数と期間を守ることで炎症を最小限に抑える役割があります。
とくに抗生剤は途中でやめてしまうと細菌が残りやすく、痛みや腫れが長引く原因になります。
私は診療で「薬は症状が落ち着いても、指示通り最後まで飲み切ってくださいね」と必ずお伝えしています。
消毒に関しても必要以上に行う必要はなく、指示があれば優しく行う程度で十分なことがほとんどです。
まとめ
インプラントの手術後は、翌日以降は腫れのピークを迎えることが多いものの、基本的には数日かけてゆっくり落ち着いていきます。
無理のない範囲でうがいや歯みがきを再開し、処方された薬をきちんと使うことで、治りをスムーズに進められます。
痛みや腫れが日ごとに強くなる、膿のような味がするなど、普段と違う変化を感じた場合は早めの相談が必要です。
手術当日から翌日までの過ごし方は難しいことをする必要はなく、ほんの少しの注意を心がけるだけで大きく結果が変わります。
安心して回復の期間を過ごすために、お伝えしたポイントが少しでも役に立てば嬉しいです。
この記事を監修した人

医療法人社団周優会
常務理事 笠原幸雄所属学会
東京シティー日本橋ロータリークラブ会員
お江戸日本橋歯科医師会選挙委員会 委員長
一般社団法人 日本橋倶楽部会員
東京科学大学歯学部 東京同窓会参与略歴
私立開成高校卒業
早稲田大学理学部卒業
東京医科歯科大学歯学部卒業
東京医科歯科大学病院勤務
笠原歯科医院 蔵前開設
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 人形町開設
医療法人社団周優会 日本橋グリーン歯科 常務理事
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 六本木開設

