デンタルニュース

インプラント周囲炎になりやすい人の5つの特徴

日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

インプラントは自分の歯のようにしっかり噛める優れた治療ですが、実は「歯周病のような炎症」が起こることがあり、それを「インプラント周囲炎」といいます。

一度進行すると気づきにくく、最悪の場合、せっかく入れたインプラントを失う可能性もあります。

私が歯科衛生士として診療している中でも、炎症が出やすい方には共通する生活習慣や傾向があり、早めに知っておくことで予防につながる場合が多くあります。

この記事では、インプラント周囲炎になりやすい人の特徴5つを解説し、今日からできる予防法もお伝えします。

「まだインプラントを入れて間もない」「これから治療を考えている」という方には、ぜひ参考にしてみてください。

インプラント周囲炎になった男性

インプラント周囲炎とは?まず知っておきたい基礎知識

①インプラント周囲炎は「歯周病に似た病気」

天然歯との違い

インプラント周囲炎は、見た目こそ歯ぐきの腫れや出血など歯周病と似ていますが、実は進行のスピードが速いという特徴があります

天然歯には「歯根膜」というクッションの役割をもつ組織がありますが、インプラントにはそれがありません。

そのため炎症が起きると、骨にまで一気に広がりやすく、気づいた時には進行していた…という場合も少なくありません。

進行するとどうなる?

炎症が進むと、インプラントを支えている骨が溶け、土台が不安定になってしまいます。

私が以前担当した患者さんでも「痛くないから大丈夫」と思っていたら、数ヶ月後にはぐらつきが強くなっていたケースがありました。

痛みが出にくいからこそ、日頃のチェックと早期発見がとても重要です。

②なぜインプラントは炎症が起きやすいのか

インプラント特有の構造

インプラントは金属と歯ぐきの境目に、細菌がたまりやすい構造があります。

また、天然歯と違って繊維で結びついていないため、一度細菌が入り込むと排除しにくい傾向があります。

特に奥歯など磨きにくい部分では、プラーク(歯垢)が残りやすく注意が必要です。

メンテナンスの重要性

インプラントは虫歯にはなりませんが、ケアを怠ると歯周病より早く悪化する可能性があります。

私の臨床経験でも、定期的にクリーニングを受けている方と、受けていない方では、炎症の発見率に大きな差がありました。

「治す」より「予防する」方が圧倒的に負担が少ないのがインプラントの特徴です。

腫れた歯茎

インプラント周囲炎になりやすい人の特徴5つ

歯ぐきや歯周病の治療をせずに放置している

炎症がある状態で治療するとリスクが高い

歯ぐきに炎症がある状態でインプラント治療を行うと、術後に細菌が増えやすく、インプラント周囲炎のリスクが高くなります。

特に歯周病は慢性的に炎症が続く病気のため、術前にしっかり治しておくことがとても大切です。

実際に、炎症が治まっていないまま治療に進んでしまい、その後トラブルにつながった例もありました。

歯周病の既往がある方の注意点

歯周病になった経験がある方は、インプラント周囲炎も起こしやすい傾向があります。

これは細菌への抵抗力や歯ぐきの質が影響するためです。

私が担当する患者さんでも、過去に歯周病治療の経験がある方は、特にセルフケアやメンテナンスの指導を細かく行うようにしています。

自宅でのセルフケアが不十分

磨き残しが起きやすい部位

インプラントは天然歯と形が違うため、境目や裏側にプラークが溜まりやすい特徴があります。

特に奥歯は歯ブラシが届きにくく、バイオフィルムがついたままになってしまうことも少なくありません。

「毎日磨いているのに炎症が出る」という方の多くが、実は細かい部分の磨き残しが原因です。

おすすめのケアグッズ

歯ブラシだけでは落としきれないプラークを取り除くため、フロスや歯間ブラシの活用が効果的です。

サイズの合った歯間ブラシを選ぶだけで磨き残しは大きく減ります。

診療室ではよく、患者さんに実際にサイズを合わせて選んで差し上げることもあります。

ケア用品の選び方で炎症リスクが大きく変わります。

喫煙習慣がある

喫煙がインプラントに与える影響

喫煙は血流を悪くし、歯ぐきの治りを遅らせます。

その結果、インプラントの周りの組織が弱くなり、細菌に対する抵抗力が低下します。

私の経験でも、喫煙している患者さんは術後の炎症が出やすい傾向がはっきりありました。

治療前後の一時的な禁煙でも、予後が改善するケースは多いです。

禁煙できない場合の対処法

完全な禁煙が難しい場合でも、術前・術後の一定期間だけ控える、ニコチン量の少ないタバコに変えるなどの工夫が有効です。

また、歯ぐきの状態をこまめにチェックすることで、早期発見につながります。

患者さんには「まずはできる範囲で減らしてみましょう」とお伝えするようにしています。

定期メンテナンスに来られない

早期発見ができず進行しやすい

インプラント周囲炎は痛みが出にくい病気のため、「変化に気づいたときには進行していた」ということがよくあります。

歯医者のプロケアで、歯周ポケットの深さやレントゲンを定期的に確認することで、早期発見が可能になります。

特にインプラント治療後の1〜2年は変化が出やすいため、こまめな来院が理想的です。

メンテナンスの間隔の目安

一般的には3〜6ヶ月に1度のメンテナンスが推奨されますが、喫煙習慣がある方や歯周病の既往がある方はもっと短い間隔が必要な場合もあります。

実際に私は、歯ぐきの状態やケアの状況を見ながら、一人ひとりに合わせて間隔を調整しています。

噛みしめや歯ぎしりが強い

過度な力が炎症の原因に

噛みしめや歯ぎしりが強いと、インプラントに過度な力が加わり、歯ぐきや骨に負担がかかります。

これが続くと炎症の誘因となり、インプラント周囲炎を悪化させることがあります。

特にストレスを抱えている方は無意識に力が入りやすく、来院時に歯ぐきが赤くなっている方もいらっしゃいました。

ナイトガードの活用

就寝中の無意識な歯ぎしりを防ぐためには、ナイトガードの使用がとても有効です。

インプラントだけでなく、自分の歯のトラブル予防にもつながります。

実際にナイトガードを使い始めてから、炎症が落ち着いた患者さんも中にはいらっしゃいます。

喫煙する男性

インプラント周囲炎の予防のためにできること

①歯医者でできる予防

プロケア

歯医者では、インプラント周囲のプラークやバイオフィルムを専用の器具で徹底的に取り除きます。

特に歯ブラシでは届かない深いところの汚れは、プロケアでしか管理できません。

また、噛み合わせのチェックや必要に応じた微調整、レントゲンによる骨の状態確認など、トラブルを未然に防ぐために多角的なケアが行われます。

「メンテナンスに来るだけで全然違いますね」と実感される方が多い部分です。

インプラント周囲のポケット測定

歯ぐきの状態を把握するために、定期的なポケット測定は欠かせません。

深さの変化は炎症の初期症状であり、早期発見にとても役立ちます。

私自身、ポケットが少し深くなっている段階で気づき、クリーニングや生活習慣の見直しを行うことで症状が改善したケースを多く担当してきました。

小さな変化を見逃さないことが、予後を大きく左右します。

②自宅でできる予防

正しいケア方法

自宅でのセルフケアは、インプラントの健康を守る毎日の土台です。

歯ブラシは毛先を細かく動かし、インプラントの境目を意識して丁寧に磨くことがポイントです。

フロスや歯間ブラシも欠かせない習慣のひとつで、特に歯間ブラシはサイズを合わせることで予防効果が大きく上がります。

磨き方の癖はご本人では気づきにくいので、定期的なブラッシング指導を受けることがおすすめです。

歯磨きをする男性

生活習慣の見直し

喫煙、ストレス、睡眠不足、偏った食生活など、生活習慣は歯ぐきの状態に大きく影響します。

特にストレスが強いと噛みしめが増え、インプラントに負担がかかることもあります。

患者さんの中には、生活リズムを整えただけで炎症が落ち着いたケースもあり、日常の小さな変化が予防につながることを実感しています。

まとめ

インプラント周囲炎は、一度進行すると治療が大変になる病気ですが、日頃のケアと定期的なメンテナンスがしっかりできていれば予防は十分可能です。

特に、歯周病の既往がある方やセルフケアに自信がない方は、早めのチェックとプロケアが大切です。

私も日々の診療で、「しっかりケアしている方ほどインプラントが長持ちしている」という実感があります。

少しの意識と習慣で、インプラントは10年、20年と快適に使い続けることができます。

この記事を監修した人

医療法人社団周優会 常務理事 笠原幸雄

医療法人社団周優会
常務理事 笠原幸雄

所属学会

東京シティー日本橋ロータリークラブ会員
お江戸日本橋歯科医師会選挙委員会 委員長
一般社団法人 日本橋倶楽部会員
東京科学大学歯学部 東京同窓会参与

略歴

私立開成高校卒業
早稲田大学理学部卒業
東京医科歯科大学歯学部卒業
東京医科歯科大学病院勤務
笠原歯科医院 蔵前開設
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 人形町開設
医療法人社団周優会 日本橋グリーン歯科 常務理事
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 六本木開設