デンタルニュース
加齢で歯並びが悪くなる?問題点と対策を紹介
日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。
「最近、歯が動いてきたかも…」
「若い頃は、もっと歯並びがきれいだったはずなのに…」
そう感じたことはありませんか?
それは、年を重ねることで起きる歯並びの変化が原因かもしれません。
私もこれまでの経験上、患者様からそういった相談を何度もされたことがあります。
この記事では、なぜ加齢とともに歯並びが変わるのか、その問題点と今日からできる対策を解説します。
加齢によって歯並びが変化する原因
①年齢とともに歯が動く仕組み
歯を支える組織の変化
歯は顎の骨や歯ぐきなどの「歯周組織」によって、グラグラしないように支えられています。
歯周組織は、日々新しい細胞に生まれ変わっていますが、その過程で歯にはごくわずかな力がかかり続けているのです。
若い頃はこの歯の動きを抑える力が強いのですが、年を重ねるとその力が少しずつ弱まってくる傾向にあります。
するとこれまで問題にならなかったような、ちょっとした力でも歯が動きやすくなってしまうのです。
親知らずや喪失歯の影響
歯並びの変化に、大きく関わってくるのが「親知らず」の存在です。
もし親知らずが横向きに生えてきたり、前の歯を押すように生えたりすると、その力で他の歯が前に押し出され、前歯がデコボコになることがあります。
また、虫歯や歯周病などで奥歯を失ってしまった場合も要注意です。スペースを埋めようと、残りの歯が傾いたり、移動したりして、全体の噛み合わせや歯並びが崩れてしまうことがあります。
②歯周組織の衰えによる影響
骨密度の低下と歯ぐきの後退
年を重ねると、体全体の骨密度が少しずつ減っていく傾向にあります。
これは顎の骨も同じで、顎の骨の密度が下がると歯を支える力が弱まり、歯が動きやすくなる原因の一つになります。
それに加えて、歯ぐきも年とともに下がりやすくなります。
歯ぐきが下がると、歯が長く見えたり歯を支える土台が不安定になったりして、見た目だけでなく歯の健康にも影響が出てくることがあります。
歯周病の進行と歯並びの悪化
特に気をつけたいのが、「歯周病」が進行してしまうケースです。
歯周病は、放っておくと歯を支えている骨が溶けてしまう病気です。
骨が溶けてしまうと歯の土台がなくなるので、歯がグラグラしたり歯と歯の間に隙間ができ、歯並びの悪化に直結してしまいます。
歯周病は早めに見つけて治療することが、歯並びをきれいに保つ上でもすごく大切になってきます。
③癖や習慣による歯並びの変化
無意識の癖が歯にかける力
日常には、無意識に歯並びに悪影響を及ぼしている癖が潜んでいます。
例えば、頬杖をつく、爪を噛む、唇を噛む、舌で歯を押すといった癖があります。
そういった癖は、一つ一つは些細なことに見えても、毎日繰り返すことで歯に持続的な力が加わり、少しずつ歯の位置をずらしていきます。
食生活や姿勢による影響
普段の食生活や姿勢も、実は歯並びに関わってくることがあります。
例えば、柔らかいものばかり好んで食べる習慣は顎を使う機会を減らしてしまい、顎の骨の発育に影響を与えることがあります。
また、いつも片側ばかりで噛む癖があると特定の歯にばかり負担がかかり、噛み合わせのバランスが崩れてしまう可能性も考えられます。
歯ぎしりや食いしばりも、歯がすり減ったりヒビが入るだけでなく、歯並びの悪化に影響します。
歯並びの変化で起こる問題点と影響
①口元に自信が持てなくなる
見た目の変化による心理的影響
歯並びが乱れ、前歯に隙間ができて目立つようになったり、歯が前に出てきたりすると、他人の視線が気になり、だんだん自信が持てなくなってしまうこともあるかもしれません。
笑顔は人とのコミュニケーションにとって大切です。だからこそ、見た目の変化が心の負担になってしまうこともあります。
こうした不安が積み重なると、人と積極的に交流することに抵抗を感じるようになる可能性もあります。
口元の印象と年齢の関係性
歯並びが乱れていると、顔立ちが左右対称に見えなかったり、口元に影ができたりして、実年齢よりも老けて見られる原因になることもあります。
逆に、きれいに整った歯並びは、若々しくて健康的な印象を与え、何よりも自信に満ちた素敵な笑顔につながります。
矯正治療の記録用にビフォーアフターの写真を撮影すると、みなさん、治療後の写真はとても顔が整った印象になります。歯並びが整っただけで顔全体の雰囲気が変わるので、口元は顔全体の印象を大きく左右する、とても大切なパーツと言えます。
②噛み合わせによる全身への影響
消化機能への負担と身体の歪み
食べ物を十分に噛み砕けないまま飲み込んでしまうと、胃や腸などの消化器官に負担がかかってしまいます。
この状態が続くと、消化不良や胃もたれといった不調につながることもあります。
さらに、噛み合わせのバランスが悪いと顎の動きが不自然になり、それが首や肩、背骨といった全身の骨格にまで影響を及ぼすこともあります。
顎関節症や頭痛・肩こりとの関連
噛み合わせが悪くなることは、顎の関節に過度な負担をかけることがあり、顎関節症を引き起こす可能性も考えられます。
さらに、悪い噛み合わせが原因で、首や肩の筋肉が常に緊張状態になり、慢性的な肩こりや、ひどい時には頭痛に悩まされるケースも少なくありません。
このように、一見歯並びとは関係なさそうに思える体の不調が、実は噛み合わせの悪化から来ている可能性もあるのです。
③歯周病や虫歯などの口腔トラブル
歯垢・歯石の蓄積と清掃性の低下
歯並びが乱れていると、歯と歯が重なっていたり、不自然な隙間が多くなります。
こういった場所には、食べかすが挟まりやすく、普段の歯磨きだけではなかなかきれいに磨ききれません。
結果として、細菌の塊である歯垢が溜まりやすくなり、それが歯石へと変化していきます。歯垢や歯石が常に存在する状態だと、菌が繁殖しやすい環境が整ってしまい、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。
口臭や感染症リスクの増加
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまうだけでなく、独特の口臭の原因にもなります。
また、お口の中の細菌が増えすぎると、歯ぐきの炎症が悪化し、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
例えば、誤嚥性肺炎や糖尿病、心臓病など、様々な病気との関連があるため、単なるお口のトラブルとして軽視できない問題と言えます。
歯並びの悪化を防ぐための習慣
①口腔ケアを見直す
正しい歯磨きと補助用具の活用
歯ブラシはお口の大きさに合ったものを選んで、軽い力で小刻みに動かすことを意識して磨きましょう。
歯と歯の間や、歯並びが複雑な部分は、歯ブラシだけではなかなか汚れを取り除けません。そのため、歯間ブラシやデンタルフロスの活用が必要です。
フロスは歯と歯の間の狭い部分に、歯間ブラシは歯茎が下がってできた隙間に効果的です。
フッ素や洗口液によるケア
日々の歯磨きに加えて、フッ素配合の歯磨き粉を使ったり、フッ素入りの洗口液を取り入れることもおすすめです。フッ素は歯の表面を強くして、虫歯菌の活動を抑える効果が期待できます。
特にフッ素入りの洗口液は、歯ブラシが届きにくい部分にもフッ素を行き渡らせることができるので、虫歯予防に役立ちます。ただし、洗口液は歯磨きの「補助」なので、これだけで歯磨きを済ませてしまわないよう注意しましょう。
定期的に歯医者で、フッ素塗布や正しいブラッシング方法の指導を受けることも、より効果的です。
②悪習慣を見直す
癖の自覚と改善策
日常の無意識の癖が、知らず知らずのうちに歯並びに悪影響を及ぼしていることは珍しくありません。
毎日繰り返されることで歯に継続的な力が加わり、少しずつ歯の位置をずらしていってしまいます。
頬杖をつく、爪を噛む、唇を噛む、舌で歯を押すといった癖がある場合は、ご自身の癖を自覚し、意識して改善することが大切です。
ナイトガードの活用
寝ている間の歯ぎしりや食いしばりは、自分では気づきにくいものですが、歯や顎にものすごく大きな負担をかけています。
これらの習慣は、歯のヒビやすり減り、さらには歯並びの悪化に拍車をかける可能性があるため、早めに対策することが重要です。
歯医者で相談し、ナイトガードを作ってもらうのも一つの手です。
ナイトガードは寝ている間に装着することで、歯への負担を減らし、歯並びの悪化を防ぐことにつながります。
③定期検診の重要性
プロによるクリーニングのメリット
定期検診でのクリーニングは、日頃の歯磨きでは落としきれない歯垢や歯石を、徹底的にきれいにします。
特に歯並びが乱れている部分は磨き残しが多くなりがちですが、専門的な器具を使えば隅々まできれいにできます。
虫歯や歯周病の原因となる細菌の増殖をしっかり抑え、お口の中を常に健康な状態に保つことは、歯並びの悪化を防ぐ上でも非常に大切です。
専門家による状態チェック
歯医者での定期検診では、虫歯や歯周病だけでなく、歯並びや噛み合わせの変化についても細かく診てくれます。
例えば、特定の歯に負担がかかっている場合や今後の変化が予測される場合には、具体的な予防策や治療の選択肢を提示してくれます。
結果として大きな問題になる前に対応できるため、お口の健康を長く保つことにつながるのです。
まとめ
年を重ねることで歯並びが変化することは、誰にでも起こりえます。
しかし、それに気づいて自分に合った対策をすることで、口元の健康と美しさを長く保つことができます。
今日からできる小さな習慣を積み重ねて、これからも自信を持って笑顔で過ごせるよう対策をしていきましょう。