デンタルニュース

高齢でもインプラントはできる?

日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

インプラントは「年齢を重ねたら難しいのでは…」と心配される方も少なくありません。

とくに75歳以上になると、飲み込みやお口の乾燥、持病や服薬など、気になるポイントが増えるのも自然なことです。

ただ、その不安は「治療ができない」という意味ではなく、少し丁寧なサポートが加わるだけで安心して進められるという捉え方に近いものです。

「焦らず、自分のペースで進めたい」「サポートがあるなら安心してお願いできる」とお話しされる方は多くいらっしゃいます。

年齢そのものよりも、体の状態に合わせたケアや治療計画が、長く快適に使い続けるための支えになります。

この記事では、75歳以上でインプラント治療を考えている方に知っておいてほしいポイントを、飲み込み(嚥下)やお薬、メンテナンスの視点から分かりやすくまとめました。

ご自身はもちろん、ご家族や介護スタッフの方にも安心して読んでいただける内容ですので、ぜひ読み進めてみてください。

インプラント治療を心配する高齢夫婦

75歳を過ぎてからのインプラント治療は何が心配?

①年齢とともにお口の環境が変わる

唾液が減りお口が乾きやすい

年齢が進むと、以前よりお口の中が乾きやすく感じる方が増えてきます。

唾液が少なくなると、粘膜が乾燥して汚れが停滞しやすくなり、インプラントの周りにも影響が出ることがあります。

実際にメンテナンス場面でも「最近口が渇くことが増えて…」とお話される方は多く、その時期から丁寧な清掃補助や保湿ケアを取り入れることで、インプラントをより楽に維持されている方をたくさん見てきました。

乾燥は珍しいことではなく年齢と共に自然に起こる変化なので、「特別悪い状態」と捉えず、無理せず対策を続けることが大切です。

歯ぐきや骨の治りにも時間がかかる

インプラント治療は、顎の骨がインプラント体としっかり馴染むまでの期間が必要になります。

75歳以上の方の場合は若い方より治りがゆっくり進むことがありますが、それは体の回復ペースが穏やかになっているだけで、異常なことではありません。

焦らず体のペースに合わせて治療を進めることが、安心につながると感じています。

②飲み込み(嚥下)が少し弱くなるとどうなる?

食事が飲み込みにくくなることがある

年齢を重ねるにつれて、飲み込む力が以前より弱くなることがあります。

食べ物が喉に引っかかりやすい、むせやすい、と感じる方もいらっしゃいます。

インプラント治療後は、硬いものを無理に噛もうとすると口の中に負担がかかることもあるため、食事の柔らかさや温度を工夫し、噛む位置を意識するだけでも楽になります。

実際、「少し形を変えただけで食事が楽になったよ」と笑顔で話される方も多く、ちょっとした調整が日々の安心につながるのだと感じます。

リハビリや食事の工夫が役立つことも

飲み込みづらさが続く場合は、食事の形状を変えたり、必要に応じて飲み込みの訓練をすすめることもあります。

特別なことをするというより「今の状態に合った食べ方に寄り添う」というイメージです。

周りの人と情報を共有しながら進めると、本人にとっても安心感が大きくなるように感じます。

飲み込みづらさを感じる高齢男性

持病や服薬によって注意が必要な場合も

①血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合

出血が続きやすくなることがある

高齢の方では、血栓予防のためのお薬(いわゆる血液をサラサラにする薬)を服用されている方が少なくありません。

このお薬は、血液を固まりにくくする働きがあるため、治療後ににじむ程度の出血が少し長く続くことがあります。

私の経験でも、「普段どおりの生活をしていたけれど、止まるまでに少し時間がかかった」という声を聞く場面は多くありました。

ただ、ほとんどの場合は緊急性のあるものではなく、落ち着いて経過を見守ることが大切です。

薬を止める・止めないは自分で決めない

血液をサラサラにする薬は、急に中断するとかえって危険な場合があります。

そのため、歯科側だけで判断せず、内科やかかりつけ医と情報を共有しながら進めることが基本になります。

「歯科治療だし一時的に止めたほうがよいのかな」と患者さんご自身で判断されることもありますが、薬は全身管理と深く関わるため、自己判断せず相談していただくことが安心して治療を受けるうえでとても大切です。

②糖尿病や高血圧などの病気がある場合

炎症が出やすく治りがゆっくり進むことも

糖尿病や高血圧といった生活習慣病があると、傷の治り方が若い方よりゆっくり進むことがあります。

これは珍しいことではなく、体の自然な反応としてよく見られる経過です。

歯ぐきの治りが穏やかに進む方の場合、通常より通院の間隔を少し短くしたりホームケアの確認を増やすことで、安心して治療を続けていける印象があります。

主治医との連携が心強さにつながる

高齢の方の場合、歯科治療と内科治療の情報をつなげるだけで、本人もご家族も安心して治療の日々を過ごしやすくなります。

例えば血糖値のコントロール状況や血圧の変化を確認しながら進めることで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

③骨粗しょう症のお薬を飲んでいる場合

骨の回復に慎重になることがある

骨粗しょう症のお薬には、骨の代謝に関わる働きがあり、種類によってはインプラント治療の進め方に注意が必要な場合があります。

過度に心配する必要はありませんが、お薬の種類や期間を確認しながら進める方が、結果的に安心して治療に臨むことができます。

歯科と内科で情報を共有するとより安心

骨のお薬は歯やあごだけではなく、全身の骨に作用する特徴があります。

治療を安全に進めるために、必要に応じて内科や整形外科と連携し、情報を共有しながらゆっくり治療を組み立てていくことがあります。

とくに75歳以上の患者さんでは、複数の医療機関を受診されている方も多いため、橋渡し役として私たち歯科側が関わることは、安心感にもつながる部分だと実感しています。

薬を服用する高齢男性

高齢の方は回復のスピードがゆっくり

①若いころより治りに時間がかかりやすい

インプラントが馴染むまでに少し時間をかけることも

インプラント治療では、人工歯根が顎の骨になじむまでの期間が必要になります。

75歳以上の方の場合、その結合や粘膜の回復がゆっくり進むことがあります。

ただそれは異常ではなく、体が無理をしないペースで落ち着いているという自然な流れです。

私が診療で関わってきた高齢の患者さんの多くは、「少し時間がかかっても良いので、安心して治療を終えたい」とお話されます。

ゆっくり進める方が結果として噛む力に安定感が出て、長く違和感なく使える印象があります。

装着までの期間が伸びることもあるが心配はいらない

若い方と比較すると、最終の被せ物(上部構造)を装着するまでの期間が少し長くなることがあります。

これは、急がずに骨の状態や歯ぐきの変化を丁寧に確認するための時間でもあります。

私自身、焦らずに進めたことで治療が安定し、その後のメンテナンスでも問題なく過ごされている高齢の患者さんを多く見てきました。

「長く使えるようにひとつひとつ確かめながら進める」ことが、インプラント治療では何より大切だと感じています。

②メンテナンスは少し短い間隔で

早めの確認で無理なく安心して使い続ける

高齢の方の場合、唾液量や清掃性の変化、お口の乾燥が進むことがあるため、メンテナンスの間隔を少し短めに設定することがあります。

定期的に状態を確認していくことで、小さな不調も早めに見つけやすくなり、炎症を防ぎながら安心して使い続けられます。

「気づいたら腫れていた」「違和感はなかったけれど汚れが溜まっていた」という方も、短い間隔で通っていただくことで、不安を抱える前にケアができます。

ご家族や介護スタッフとケア方法を共有

75歳以上になると、ご家族や介護スタッフと一緒に口腔ケアを支えることも増えてきます。

ブラッシングの方法や清掃用具の選び方など、医院と周囲のサポートがつながることで、本人が無理なく続けられる日常ケアが整います。

支え合いながらケアを続けていくことは、高齢になってもインプラントを快適に使うための大切なポイントです。

家族のサポートのイメージ

まとめ

75歳を過ぎてからのインプラント治療は、若い頃と全く同じように進められる場合もあれば、体の変化に合わせてゆっくり時間をかけた方が良いこともあります。

唾液の減少や飲み込みの変化、服薬の影響など、年齢とともに自然に起きる変化は誰にでもあるもので、特別なトラブルと捉える必要はありません。

むしろ、その変化に寄り添いながら治療を進めていくことが、インプラントを長く使うためのいちばん大切な視点だと感じています。

治療後の経過観察やメンテナンスを少し短い間隔で行うことで、炎症や不快感を早めに解消できたり、ケア方法をその時の状態に合わせて調整できたりします。

ご家族や介護スタッフと情報を共有しながら、無理のないペースでケアを積み重ねていくことで、ご本人の負担も大きく減っていきます。

私は年齢は治療を諦める理由ではなく、必要なサポートを少し増やしていくきっかけだと考えています。
高齢であっても、口から食べる喜びや会話のしやすさを守りながら、インプラントを無理なく快適に使い続けていくことは十分可能です。

ご自分のペースで、安心して治療に向き合っていきましょう。

この記事を監修した人

医療法人社団周優会 常務理事 笠原幸雄

医療法人社団周優会
常務理事 笠原幸雄

所属学会

東京シティー日本橋ロータリークラブ会員
お江戸日本橋歯科医師会選挙委員会 委員長
一般社団法人 日本橋倶楽部会員
東京科学大学歯学部 東京同窓会参与

略歴

私立開成高校卒業
早稲田大学理学部卒業
東京医科歯科大学歯学部卒業
東京医科歯科大学病院勤務
笠原歯科医院 蔵前開設
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 人形町開設
医療法人社団周優会 日本橋グリーン歯科 常務理事
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 六本木開設