デンタルニュース
お口の健康が全身の病気につながるって本当?
日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。
診療中、患者さんから「歯の病気が体全体に影響するのですか?」と質問されることがあります。
実は、お口の健康状態は全身の健康と密接に関係しています。
歯ぐきの炎症や口内細菌の増加が血流を通じて臓器に影響し、さまざまな病気のリスクを高めることもあるのです。
この記事では、歯と体のつながりをわかりやすく解説していきます。

お口のトラブルが体の病気につながる3つの理由
①歯ぐきの炎症が血管に広がる
血液に入り込んだ細菌が心臓や脳に悪影響
歯ぐきの炎症から血液に細菌が入り込むことがあります。
血液に乗った細菌は全身を巡り、心臓や脳といった重要な臓器に到達することもあります。
この状態が続くと、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重い病気につながることもあります。
歯ぐきの出血を「ちょっとしたこと」と思って放置すると、知らないうちに体全体へ悪影響が広がってしまうのです。
炎症が長引くことで体の調子が崩れる
慢性的な炎症は体に負担をかけ、免疫力の低下に繋がります。
その結果、風邪をひきやすくなったり、疲れやすさや倦怠感として症状が現れることも少なくありません。
歯ぐきの腫れや出血が治らず来院された患者さんが、「最近、体調が優れなかった」と話すこともあり、お口のトラブルが体全体の不調のサインとなることを日々感じます。
②お口の中の菌バランスが崩れると全身に影響
糖尿病や生活習慣病とのつながり
歯周病菌は、体の中のインスリンの働きを妨げる物質を作り出すことがあります。
そのため、血糖値が安定せず、糖尿病の症状が悪化することがあります。
実際に「歯周病の治療を始めたら、血糖値が安定した」という患者さんもいらっしゃいます。
つまり、お口の環境を整えることは生活習慣病の予防にも直結しているのです。
がんや認知症に関係することもある
近年の研究では、歯周病菌が胃や大腸などのがんリスクに関わることがわかってきました。また、歯周病菌の毒素が脳に影響を及ぼし、アルツハイマー型認知症の進行に関与することも報告されています。
お口の健康を守ることは、老後の生活の質にも大きく影響するのです。
③飲み込みのトラブルから肺炎を起こすことも
高齢者に多い「誤嚥性肺炎」とは
加齢により飲み込む力が弱くなると、食べ物や唾液が気管に入りやすくなります。
そこにお口の中の細菌が混ざることで誤嚥性肺炎が発生することがあります。
高齢者の死亡原因の上位にも入る疾患で、毎日の口腔ケアが命を守ることにつながります。
毎日のお口のケアで防げる介護予防
お口の中を清潔に保つことは、単に歯を守るだけでなく、栄養吸収や体力維持にもつながります。
しっかり噛み、きちんと飲み込むことは、元気に日常生活を送る力を維持することに直結します。
患者さんの中には「口のケアで食事が楽しくなった」と喜ばれる方もおり、介護予防としての重要性も日々感じます。

放っておくと大変な代表的な病気
①糖尿病との悪い関係
歯周病が血糖コントロールを邪魔する
歯周病菌が作る炎症物質は、インスリンの働きを弱める作用があります。
その結果、血糖値が下がりにくくなり、糖尿病の管理が難しくなります。
実際に、歯周病を治療することで血糖値が改善したという研究結果も多く報告されています。
治療の効果が出にくくなることも
歯周病を放置すると糖尿病の薬が十分に作用されないこともあります。
逆に、糖尿病が悪化すると歯周病も進行する「悪循環」に陥ります。
この二つの病気はお互いに影響し合うため、両方の病気を同時にケアすることが、健康維持のためにとても大切です。
②心臓や脳の病気とのつながり
動脈が硬くなる「動脈硬化」との関係
歯周病菌が血管に入り込むと血管の壁を傷つけ、動脈硬化を進めてしまいます。
動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞の大きなリスク要因であり、命に関わる病気の引き金になります。
歯ぐきの健康が心臓や脳の健康にまで影響しているのです。
血管の炎症から心筋梗塞や脳梗塞のリスクに
血管が炎症を起こすと血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
血栓が心臓で詰まれば心筋梗塞、脳で詰まれば脳梗塞につながります。
患者さんの中には「まさか歯の病気が心臓の病気に関係しているなんて」と驚かれる方も多いですが、それほど深い関係があるのです。
③妊娠中のお口のケアも大切
歯周病が早産や低体重児につながることがある
妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすく、歯周病が進行しやすくなります。
炎症物質が子宮に影響し、早産や低体重児出産のリスクを高めることもあります。
母子の健康を守るため、妊娠中の口腔ケアは欠かせません。
妊娠中こそ定期的なケアで安心
妊婦さんは体調の変化で歯みがきが難しいこともあります。
その際、歯医者でのクリーニングやチェックが心強い味方になります。
「自分と赤ちゃんのため」と考えれば、通院への安心感も高まります。

今日からできるお口と体を守る3つの習慣
①自宅でできること
歯ブラシ+フロスでしっかり汚れを落とす
毎日の歯みがきに加えて、フロスや歯間ブラシを使うことで歯と歯の間まで汚れを落とせます。
患者さんの中には「フロスを使い始めてから歯ぐきの出血が減った」と喜ぶ方も多く、少しの習慣が大きな予防効果につながります。
バランスの良い食事や生活習慣で菌のバランスを整える
砂糖の多い食事や不規則な生活は、歯周病菌やむし歯菌を増やす原因になります。
栄養バランスを意識した食事や適度な運動、十分な睡眠は、お口だけでなく全身の健康維持にも欠かせません。
②歯医者さんに頼ること
定期的な歯石取りやクリーニングで清潔を保つ
自宅で磨くだけでは、歯石や細かい汚れを完全に除去することは難しいです。
歯医者でのクリーニングは、普段落とせない汚れをきれいに除去し、口腔環境をリセットしてくれます。
プロのチェックで病気を早期発見できる
歯科衛生士や歯科医師は、歯や歯ぐきの変化を早期に見つけることができます。
自分では気づかない異変を発見できることが、病気の早期発見や重症化予防につながります。
③全身の健康を意識すること
運動・食事・睡眠など生活習慣の改善
お口の健康は、全身の生活習慣とも密接に関係しています。
運動不足や睡眠不足が続くと免疫力が低下し、歯周病菌が活発になることもあります。
生活リズムを整えることが、お口と全身の健康を守る基本です。
「かかりつけの歯医者」を持って安心感を得る
体のかかりつけ医と同じように、歯にも「かかりつけ」を持つことは大切です。
定期的に通うことでお口の状態を把握でき、些細な不安も相談できます。
頼れる場所があるだけで、健康への安心感は大きく変わります。

まとめ
歯やお口のトラブルを放置せず、長期的に予防することが将来の健康につながります。
歯を1本失うことが寿命に影響するというデータもあり、オーラルケアはまさに「未来への投資」です。
毎日のケアと定期的な歯医者の受診を組み合わせることで、自分の体を長く守ることができます。
まだ定期的なメンテナンスに行かれていない方も、この機会にかかりつけの歯医者を決めてみてください。
この記事を監修した人

医療法人社団周優会
常務理事 笠原幸雄所属学会
東京シティー日本橋ロータリークラブ会員
お江戸日本橋歯科医師会選挙委員会 委員長
一般社団法人 日本橋倶楽部会員
東京科学大学歯学部 東京同窓会参与略歴
私立開成高校卒業
早稲田大学理学部卒業
東京医科歯科大学歯学部卒業
東京医科歯科大学病院勤務
笠原歯科医院 蔵前開設
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 人形町開設
医療法人社団周優会 日本橋グリーン歯科 常務理事
医療法人社団寿幸会 笠原歯科医院 六本木開設