デンタルニュース

通わないとどうなる?インプラントのトラブル

日本橋の歯医者「日本橋グリーン歯科」デンタルニュース担当スタッフ、歯科衛生士の平野です。

「仕事が忙しくて、インプラントのメンテナンスにしばらく行けていない…」

そんな方、実はとても多いんです。

痛みもなく問題ないように感じても、実はそのまま放置すると思わぬトラブルにつながることがあります。

「インプラントを入れたらもう安心」と思っていた方が、数年後に不具合を感じて来院されるケースも少なくありません。

歯ぐきの炎症や被せ物の破損など、初期段階では気づきにくい症状もあるのです。

しかし、正しいセルフケアと定期的なメンテナンスを続ければ、インプラントは長く健康に保てます。

この記事では、実際に見てきたトラブル例と、再発を防ぐためのポイントをわかりやすくお伝えします。

傾いたインプラント

インプラント治療は「入れて終わり」ではない

①インプラントは天然の歯よりもデリケート

歯の「感覚センサー」がないため、異変に気づきにくい

自分の歯には、噛む力や炎症を感じ取る「神経のクッション」のような組織があります。

しかし、インプラントにはそれがないため、炎症が起きても痛みや違和感を感じにくいのが特徴です。

そのため「何も症状がないから大丈夫」と思っていても、実は歯ぐきの中で炎症が進んでいることもあるのです。

歯ぐきの境目に汚れがたまりやすい構造

インプラントは、歯と歯ぐきの間にわずかなすき間ができます。

そこに汚れが入り込みやすく、普通の歯みがきだけでは落としきれないことがあります。

特に奥歯や被せ物のまわりは見えにくい部分なので、汚れが残りやすい場所です。

「痛くないから大丈夫」と油断してしまう方が多い

私がこれまで担当してきた患者さんの中にも、「痛くないから大丈夫」と数年ぶりに来院される方がいました。

ところが来院された際に見てみると、歯ぐきが腫れてインプラントのまわりに炎症があったのです。

早めにチェックできていれば、簡単なケアで治せたケースでした。

痛みがなくても、定期的なメンテナンスはやはり大切です。

②メンテナンスの目的と通院頻度の目安

3〜6ヶ月ごとの定期チェックが基本

インプラントを長く使うためには、定期的なチェックが欠かせません。

多くの歯医者では3〜6ヶ月ごとの来院をおすすめしています。

この間隔は、汚れがたまって炎症が起こる前に対処できるちょうど良いタイミングです。

「まだ大丈夫かな」と思っても目に見えない変化が起きていることもあるので、早めの確認が安心です。

自分では落とせない汚れをプロがクリーニング

歯ブラシでは落とせない、被せ物のすき間に入り込んだ汚れを専用の器具で丁寧に取り除きます。

歯医者でのプロケアを定期的に受けることで、炎症やトラブルを防げます。

メンテナンスは歯のお掃除だけでなく、歯を守るためのチェックでもあるのです。

噛み合わせや骨の状態も一緒に確認

メンテナンスでは、噛み合わせやインプラントの土台(骨)の状態もチェックします。

時間が経つと、噛み方のクセや歯ぎしりなどで微妙なズレが生じることがあります。

小さな変化を早めに見つけて調整しておくことで、インプラントを長く安定して使うことができます。

メンテナンスを受けて長く使用するインプラント

メンテナンスを怠ると起こる3つのトラブル

インプラント周囲炎(歯周病のような炎症)

初期はほとんど痛みがなく進行する

インプラントのまわりに炎症が起こる「インプラント周囲炎」は、インプラントの歯周病のようなものです。

怖いのは、初期のうちはほとんど痛みや腫れがないことです。

そのため、「見た目も変わらないし大丈夫」と思ってしまう方が多く、気づいたときには骨が溶けてしまっているケースもあります。

放置するとインプラントが抜けることも

炎症が進行すると、インプラントを支える骨が少しずつ減っていきます。

この状態を放っておくと、最終的にはインプラントがグラグラし、抜けてしまうこともあるのです。

せっかく時間と費用をかけて入れたインプラントを守るためにも、早めの発見・対処が大切です。

噛み合わせのズレや被せ物の破損

歯ぎしりや食いしばりが負担になる

インプラントはしっかり固定されていますが、天然の歯よりもしなやかさがありません。

そのため、歯ぎしりや食いしばりが続くと、強い力が一点に集中してしまいます。

「朝起きると顎がだるい」「被せ物が欠けた」などのトラブルが起きることもあります。

小さなズレでも放置すると大きな破損に

噛み合わせは日々少しずつ変化しています。

特に数年経つと、周囲の歯の位置や噛む力のかかり方が変わり、わずかなズレが出てきます。

このズレを放置すると、被せ物の割れやネジの緩みにつながることも。

定期的に噛み合わせをチェックすることで、早めの調整ができます。

早めに気づけば簡単な修正で済む

私が担当した方の中には、ほんの小さな噛み合わせのズレを早めに見つけて、軽く削るだけで済んだケースもあります。

定期的に通ってくださっていたおかげで、大きな破損を防げました。

「違和感を覚えたらすぐ相談」が、インプラントを長持ちさせるいちばんのコツです。

骨や歯ぐきの変化に気づけない

骨が少しずつ痩せてしまうことがある

歯を失ったあとの骨は、使わない部分から少しずつ痩せていく性質があります。

インプラントは顎の骨への刺激になるため、適切に機能していれば、骨の痩せを防ぐ効果が期待できます。

しかし インプラントをしても、適切なケアを怠ると骨は痩せてしまうことがあります。

骨が減るとインプラントが安定しづらくなったり、被せ物が浮いたように感じることもあります。

歯ぐきが下がると見た目にも影響が出る

骨が痩せると、それに合わせて歯ぐきも下がっていきます。

前歯などでは金属の部分が少し見えてきたり、歯の長さが不自然に見えることにもつながってしまいます。

痛みがない分、見た目の変化で気づくケースが多いです。

通院をやめた患者さんの変化から感じたこと

以前、数年ぶりに来院された患者さんが「最近、歯が長く見える気がして…」と相談に来られました。

検査すると、骨と歯ぐきが少しずつ下がっていたのです。

定期的に見ていれば防げた変化でした。

歯ぐきや骨の変化はゆっくり進むので、何も問題がないうちからのチェックが何より大切だと感じます。

インプラントに痛みを感じる女性

トラブルを防ぐためにできること

①セルフケアで意識したい3つの習慣

毎日の歯みがきを1本ずつ丁寧に

インプラントのまわりは、天然の歯と形が少し違います。

特に歯ぐきとの境目には汚れがたまりやすいので、歯ブラシの毛先を細かく動かして1本ずつ磨く意識が大切です。

歯ブラシを当てる強さとしては、力を入れすぎず、軽く当てるくらいで十分です。

磨く順番を決めておくと、磨き残しを防げます。

歯間ブラシやフロスで汚れを残さない

歯と歯の間や、インプラントの被せ物の下のすき間は、歯ブラシだけでは届きません。

歯間ブラシやフロスを使って、プラーク(汚れ)をしっかり除去しましょう。

サイズや使い方に迷ったら、メンテナンス時に相談をしましょう。

あなたのお口に合ったケア方法を一緒に見つけられます。

寝る前のケアが一番大切

1日の中で最も大切なのが「寝る前のケア」です。

寝ている間は唾液が減り、細菌が繁殖しやすくなります。

寝る前にしっかりケアをすることで、夜の間にインプラントの周りで炎症が起こるのを防げます。

1日5分の丁寧なケアが、長持ちの秘訣です。

②歯医者でのプロフェッショナルケアの内容

専用の器具でインプラント表面をていねいに清掃

インプラントの表面には、歯ブラシでは落としきれない細かい汚れがつくことがあります。

歯医者ではチタンを傷つけない専用の器具を使い、やさしく汚れを取り除きます。

見た目はきれいでも、顕微鏡レベルでは汚れが残っていることもあるので、定期的なプロのクリーニングが欠かせません。

炎症の早期発見と噛み合わせのチェック

メンテナンスでは、インプラントのまわりの歯ぐきの状態を確認し、炎症のサインがないかチェックします。

同時に、噛み合わせのズレやネジの緩みがないかも確認します。

小さな変化を早めに見つけることで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。

噛み合わせがずれたイメージ

まとめ

インプラントは、メンテナンスを怠ると知らないうちに炎症やズレが起こることもありますが、定期的なケアを続けることで10年、20年と快適に使い続けることができます。

歯科衛生士として多くの方の経過を見てきましたが、定期的にメンテナンスに通っている方ほど、「噛める生活」を続けていると実感します。

忙しい毎日でも、数ヶ月に一度のチェックを習慣にすることで、あなたのインプラントもきっと長く守れます。

「 治療を終えるではなく、育てていく」

そんな気持ちで、これからも一緒にケアを続けていきましょう。